ふわり
ふわり
ふわり
羽根が舞う
光を受けながら
ふわり
ふわり……
-第7話- 神の子
祭壇に突如現れた光のシルエットは徐々にその形を変えていった。
人間のような形だ。
手足がある。
再び強い光が発しられ、目が眩む。
だが、目は痛くない。
こんなに強い光ならば、目が痛くなるはずだ。
この光は全く痛みを感じない。
いや、むしろ。
優しい光だ。
心地よい。
クロネがそう思っているとシルエットの光が溶けていった。
足元から光が溶けていっている。
真っ白な靴。
ダンスシューズのような靴だ。
靴を履いている足は雪のように白い。
次にふんわりとしたこれもまた白いワンピース。
どうやら少女のようだ。
空色の明るくて淡い長い髪が現れる。
まだ幼い感じが残っている顔。
瞼は閉じられている。
ここまでは 『普通の人間』 だ。
少女の背中には。
大きな白くて美しい羽根がはえていたのだ。
「 『アルティア人』……?」
アルフはそう呟いた。
アルティア人は羽根をもった種族であると聞いたことがあった。
やがて、少女の瞼がゆっくりと開かれた。
意思の強い、紅色だった。
少女の両耳についている十字架の紅いピアスが美しく輝いた。
******************
シルヴェは目を開いた。
羽根を二・三回動かしてみる。
どこにも故障はない。
いや、支障と言うべきなのだろうか。
おそらく、ここは下界なのだから。
シルヴェは周りを見渡した。
ここはどうやら下界で『きょうかい』と呼ばれる所らしい。
入り口と見られる扉の上に十字架があるから。
それにしても、暗い。
下界と言うものはこんなにも暗いものなのだろうか。
アルティア神に話は聞いていたが、ここまで暗いものだったとは。
祖国――アルティアがより天に近い場所にあるからなのだろうか。
シルヴェはやっと自分以外にも『ヒト』がいることに気づいた。
三人。
皆、羽根ははえていない。
シルヴェは羽根がはえていない彼らを異様に感じた。
(いいえ。ここでは私が異様なんですね…)
三人はシルヴェをじっと見つめている。
三人の服装からすると話に聞いていた『しんかん』とは違うようだ。
(『きょうかい』には『しんかん』しかいないと聞いていたのですが…)
ここは本当に『きょうかい』なのだろうか。
シルヴェは不安になった。
(座標はあっていた…はずです。アルティア様に間違いはないはずです)
シルヴェは決断した。
「ここはスファルの『きょうかい』ですか?」
どうやら翻訳機はちゃんと作動しているようだ。
発した言葉が現地の言葉に変化される。
そのことに驚いたのか、大きな帽子を被った少年は「うわっ」っと悲鳴を上げた。
「しゃ、しゃべった…」
「あの……ここは『きょうかい』なんですか?」
******************
目の前の天使が言葉を発した。
アルフは驚いて声を上げた。
クロネは自分達の後ろにいるマアヤを見た。
彼女は驚愕していた。
彼女らしくない。
「あの…話を聞いてますか?」
天使が再び問う。
「え?あ…あぁ。…ここはスファル、教会だ」
クロネは天使の問いに答えた。
天使は安心したように微笑んだ。
「よかった…」
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