-狐、飼いました-







「大丈夫?」

おれのまえにおおきなかげができる。にげなきゃ、とおもったけど、あしからちがでていてうごけない。

「酷い事するね」

にんげんはふぅとためいきをついた。あなたたちがしかけたんだろ。
このあしにつきささっているつめたくてするどいこれを。

「ちょっと痛いかも。ごめんね」

にんげんはおれにさらにちかづいた。
ちかづくな、とおれはうなる。

「大丈夫、怖くないから」

にんげんのてがおれのあしにふれる。こわい。こわいこわいこわい。
あしにするどいいたみがはしる。
ささったときとおなじようないたみ。
いたいいたいいたいいたいいたい!!!



カラン。


あしからつめたいもののかんしょくがなくなった。
びりっとなにかがやぶれるおと。

「今はこれしかないけど。ハンカチでごめんね」

あしにきれいなぬのがまかれる。
にんげんはおれにてをのばし、だきかかえた。
はなせ!はなせ!!
かんだり、ひっかいたり。
せいいっぱいにんげんのうでのなかでもがく。


がりっ


にんげんのうでをふかくえぐった。
ぱたぱたとあかいちがでる。
おれとおなじ。
それなのににんげんはひょうじょうをかえてない。


いたいんでしょ?
おれとおなじでいたいんでしょ?

・・・・・・いたいのに。



おれはいつのまにかにんげんのきずをなめていた。








だって同じ赤だったから

(痛いよね、やっぱり)





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