『大地滅び行く時、神の世界から天使が舞い降りる。彼の者、大地を潤し、世界に救いをもたらすだろう』

『人々よ案ずなかれ、救いは訪れる』









第1章 Time Of Promise  -序章-



コツコツコツ…

白い靴が床に触れるたびに光が散る。

空のような澄んだ腰まである青い髪を揺らして、少女は歩く。青い髪とは正反対の紅い瞳は強い意思を宿していた。

コツコツコツ…

少女は歩く。やがて、真っ白な祭壇の前に立つと少女は項垂れた。

『約束の時です―――』

天から柔らかな女性の声が降り注ぐ。

『貴女に課せられた使命を今、果たすのです』

少女は顔を上げた。チャラ…と耳についているピアスが揺れる。

「はい。では、行きます…」

少女は目を閉じ、手を胸の前で組んだ。光が少女を包み込む。

バサ…ッ

少女の背中から純白の羽根が生え、飛び立った。


――世界へ



『大地滅び行く時、神の世界から天使が舞い降りる。彼の者、大地を潤し、世界に救いをもたらすだろう』


約束の――時。







******************







雨。

雨だ。

あの時と同じ。




真っ赤に染まる視界。
だか、その赤は自分のものではない。
自分と母をその身を盾にして守った父親のものだ。

叫んだ。

父は 逃げろ と叫んだ。

母は自分を抱えて逃げた。

ただ、泣きじゃくるだけの自分。



力があれば――父を救えた。

ガライドから逃げ、自分と母が流れ着いた国―スファル。その時も雨が降っていた。

母に手を引かれながら、歩く自分。


急に母が止まった。

どうしたの?と問いかけても返事は返ってこない。


母は微笑んだ。


『これからは ひとり で生きなさい』

鼻や口から赤いものが零れてきた。
母はそれを吐きながら倒れた。

動かなくなった母を揺らす自分。

ねぇ、起きてよ。こんな所で寝ていたら風邪、引くよ?

冷たくなる母。

雨は赤く染まった大地を洗うかのようにざぁざぁと降り注ぐ。


起きてよ、いつまでこうしているの?


いつまで寝ているの?


ねぇ、起きてよ…。


雨は強くなる一方で。

少年は叫んだ。



少年の悲しい叫びは雨に消された。





あれから何年たった?
5年か…早いな。


今日は、大雨だ。

あの時と同じ…雨だ。



雨の日は、何かありそうだ。










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